あんまり、うちのJr.ユースメンバーにも普段したことないお話を、ここでしてみたいと思います。というのも、自分を信じて突き進むことがどれだけ大切なのか?ということを、これからの若い世代のサッカーを夢見て頑張っている人達に伝えなければ勿体ないと思ったのが、その理由かな。
僕が、20歳の時にプロ契約したクラブに、1人のブラジル人選手が、テストを受けに来ていました。
彼は、いつの間にか練習に来なくなりました。
このクラブは当時、ブラジルトップリーグに昇格し、新しい戦力を補強していたので、立ち替わり入れ代わり、新しい選手がテストされていました。
単純に言ってしまえば、テストにパスしなかった、あるいは、条件が合わなかったということになるけれど、彼は、1週間ばかりでいなくなってしまいました。
それから8年後のこと。
私は、近くのクラブに移籍して、その時期がフランスW杯1998年の時でした。
練習を終えて、選手達と昼の食事をしている時、スポーツTVが流れていて、w杯の選手選考で、選出された選手として1人1人インタビューを受けていました。
その中に、前述した彼が、ブラジル代表不動の右サイドバックの世界のカフー選手の二番手として、ブラジル代表に選出されて、その選手がインタビューされていたのを目の当たりにして、鳥肌が立ったことを今でも忘れない。本当に驚いた。
その名はゼ・カルロス。
テストからいなくなった後、色々な小さなクラブでプロ選手権で試合に出ていたことは新聞でも拝見していたが、その活躍が認められて、名門サンパウロFCと契約し、W杯イヤーに大活躍をして、ザガロ監督の眼に留まり、見事ブラジル代表に選出され、決勝で、フランス代表には敗れたが、準優勝したメンバーの一人になり、自らも、準決勝の対オランダ戦で累積で出場できなくなったカフーの代役として活躍し、3-2でオランダを撃破した時のメンバーとなった。
それから、7年後のこと。
COJBは、U23のメンバーをブラジルに強化合宿として、ブラジルへ行き、超名門のサンパウロFCのU20と試合をするために、同クラブのU20のトレーニングセンターに訪問した。
試合をしていると、トレーニングセンターの係員が「ゼ・カルロスだ!!」と言っていたのを耳にし、振り返ると、正に、彼だった。
僕は、彼に声を掛けた。「久しぶりだな!!今、日本人の選手を連れてきているので、一度、君の物語を語りに来てくれないか?」と頼んだら、彼は、直ぐにOKを出してくれた。
宿泊していたホテルに彼は語りに来てくれた。フランスW杯で来たユニを持って。
飾らない、気さくな男。彼の印象はこうだ。
彼の講義は、家のメンバーだけでは勿体ないので、当時関わっていたクラブのブラジル人選手の若手も呼んで、彼の物語を聞いて貰うことにした。
その中で、色々な貴重な話があったが、僕が知らない話が沢山出て来た。
「僕は、夢を叶えることが出来ました。しかし、僕はブラジル国内では本当に稀な道を歩んで来ていますが、実は、20歳まで、草サッカーチームでプレーしていました。ブラジルでは、本当に稀で、周囲は皆、プロに絶対になると言った僕をバカ扱いしました。絶対に無理と。しかし、僕は、信念を絶対に曲げず、絶対に叶えるということしか頭にありませんでした」
『彼はあの時、草サッカーチームから初めてプロテストを受けに来ていたのだな』とそこで初めて思い出しました。
説得力があり過ぎる人って世の中に多く存在しますが、カナリヤ色のブラジル代表のユニを持って、語る彼の言葉の重みは言うまでもありません。
シンデレラボーイなんて、よく聞いた話ではあるが、ブラジル代表というのは、サッカー界ではどの国に行っても、聞くだけで崇拝される選手であることは、昔も今も変わりません。
こんな雑草も雑草から、サクセスストーリーがあったものか。
彼は、雑草と自ら言い、彼は引退後、元ブラジル代表のメンバーとして、アジアやヨーロッパ各国を渡り歩く活動もしていたが、奥さんがゴスペルの歌手、彼は市役所でスポーツ局長をしていた。
彼の経験を日本で・・・と当時思ったもので、彼も、積極的に僕に連絡してきた。
彼は講義の時に強く語った。
「自分を信じること。周囲がなんと言おうと、自分がどうしたいか。何を言われようがそれをバネにして突き進む事、それが私の夢を叶えたのです」
カナリヤ色の背面には「ZE CARLOS」とネーミングされたユニを見せられながら、
こんな説得力はそうないと、思ってしまった。
彼も、良い意味でバカな男なんだと思った。
そもそも、W杯で準優勝した彼が、よく日を改めて、わざわざお金にもならない講義に来てくれたと思ったが、彼には彼の後進に伝えたいという精神があったと思う。
決して諦めない不動の精神。これは、日本のこれからを生きる人たちにも良い言葉ではないかなと思って久しぶりに書きました。
また、ゼと再開できることを願っています。