【育成日記】カタールサッカーの進歩

アジア杯で日本がカタールに敗れた時に、アナウンサーがカタールサッカーの進歩の源の
話をしていた。僕がこのプロジェクトのプログラムをTVで観たのは2013年のこと。
その時に以下の記事をブログに書いた。

【アスパイア(カタール)の育成プロジェクトを見て】

カタールで世界トップクラスの選手を育成するために13歳以下の特に貧しい家庭の境遇にある少年を世界中から集めるプロジェクトの番組を見た。
なぜ育成プロジェクトが13歳以下であるか?というとあのメッシがバルセロナに発掘されたのも13歳であったからだという。

この類の番組を見るといつも思うことだけれど、日本の子供達がどれだけ恵まれた環境でサッカーをしているか?がよく解る。なんなのだろう?と思うことがある。
何も貧しい国、家庭の境遇で育った子だけがサッカー選手として成功するというものではない。ブラジルでも同じ。有名どころではあのカカもブラジルでは中流より上の家庭の育ちと聞いている、自分とプレーした選手達がかなりの割合でスラム育ちだったとは言えない。

この番組では同育成機関のパラグアイの選考会に挑戦する田舎の家庭で育っている少年、ウーゴとイゴール、またブラジルの国境近くに住むジュニオールという少年にもスポットを当てていた。共通して言えるのは3名とも家庭環境は複雑で貧困であるということ。

パラグアイ国内では50名が最終選考に呼ばれ、3名のみがカタールに渡りアスパイアに入団出来るか否かを決定される。この一次テストの応募数はなんと2万人。
結論から言うと、結局パラグアイからの合格者は一人も現地カタールのアスパイア育成機関で合格者は出なかった。
がここで取り上げたいのは、セレクションの規模や目的ではなく、どれだけ世界には、サッカーというスポーツに対して夢と希望を持ち、生活の糧に頑張っている子供達がいるかということ。

サッカーでお金を稼ぐことが唯一の貧困からの脱出手段。
「成し遂げたい」という気持ちは強いが、生活が苦しいために3度の飯が摂れず栄養を摂取できない。
少年は家庭の生活を助けるために1回50円の靴磨きの仕事を毎日しなくてはならず、クラブに所属し指導者の下でまともな練習を繰り返すことが出来ない。その中でのカタールへのチャレンジ。
「サッカー選手になれるならなんでもする」「家族を楽にさせてあげたい」
とギラギラとした眼でインタビューに答えていた。

そして、我々日本でサッカーをしている子供達がどんなに恵まれた環境でサッカーをしているか?ということを振り返る必要があるということなのです。

パラグアイでは人口の4割が貧困層という。
「お金がなければ何もできない、ということをこの子は知っているのです」と少年の祖母がコメントしていた。が、物凄くリアルな言葉。テストを受講したくてもそこの会場まで行くお金すらない。首都アスンシオンまで行くのに3,000円、2次選考に向かうための交通費がない。
幼い頃から祖父母に育てられ、祖父母の農家の手伝いをしながらサッカー選手を目指している。サッカー選手になりたい理由は幼い頃に親が離婚、母がアルゼンチンに出稼ぎに出て殆ど母親の顔を見れない。自分がサッカー選手になり母親が自分の元に帰って来てくれることを夢見ている。2次選考に行くための交通費を心配し、お金のない祖父母に遠慮がちに打ち明けると祖父母が「なんとかする」と約束し、村の人達に呼びかけてカンパで最終テストに臨む。村人の一人が「君は村の期待の星だ」と激励して送り出し、少年は涙し強い決意で首都アスンシオンに向かった。

しかし、選考ゲームでは無情にも力を発揮出来ず、都会で指導者の下で一日中練習している3名がカタールへの切符を掴み、3名は一人も合格することはなかった。

日本の子供達と夢は同じプロ選手。しかし、サッカーをする道具や環境は明らかに違う。日本の子供は食事もしっかり三度摂れ、栄養まで管理されている。おまけにおやつまででる。多分、日本の子供達からは「家族の生活を楽にさせたい」という言葉はまず出ないと思う。何故なら、そのような境遇ではなくその必要性がない。
与えられるのが当たり前。これはどんなに親が教え込んでも理解させるのは難しい。
しかし、明らかに日本の環境は生ぬるいとつくづく思い知らされる。

貧しくてお金がなく、大人のように仕事をしなくてはならずまともにサッカーの練習が出来ない、されど成し遂げたいというハングリーな気持ちはかなり強い。成し遂げないと貧困から脱出出来ない少年の境遇と、サッカーは好き、親が子供のサッカーにかける余裕はある。パラグアイから最終選考で合格した3名はいずれも都会でサッカークラブに所属している子供達だけであった。気持ちが強くても、そこにかける時間や環境がある程度は満たされないと皮肉にもその夢に近づけないのか?この番組を見ていて物凄く複雑な気持ちになった。ある程度そこに賭ける資金がないと夢に近づかないのか?
しかし、悪いことばかり続かない、少年の一人は選考会不合格の後、朗報が入った。パラグアイ国内のプロクラブから声が掛かったということ。
決して諦めてはいけない。スタートは違えど、強いハートを持ち続ければ貧困で環境がなかろうと、地道に努力を重ねればいつ誰が視てくれているか判らないということも気付かされる番組でもあった。

日本の子供達は既にコンディションはある意味整っていると思う。しかし、サッカーに賭けるハートがそこまで追いつくか?と言えばどうかと思う。
日本ではサッカーで生活しなくても普通に働けば生活も出来るし、好きなものも買える。
サッカー選手にならなくてはならない必要性はなく、あくまでも本人がサッカーに賭ける情熱がどこまであるかに尽きる。

この記事を書いたのが2013年、今読み返しているのが2019年。
都会で良い環境に育っている子がカタールへの切符を手にした。
貧しい環境で育っている子にはハングリーな気持ちはあっても、毎日、存分に練習する環境がないことがハンデキャップとなった。

日本の子供はどちらかと言うと環境は整っている。
しかし、ハートがついてこない。というか続かない。

ある程度、続けたら止めてしまう。サッカーが好きなのは変わらない。
しかし、それを生活の基盤にする必要性がこの日本にはないのかもしれない。

何をしても生活ができる国だから。

カタールのプロジェクトはこの時期にスタートし、2019年では日本を上回る
成績を残した。アジアの国がより多く世界基準になれば、当然、日本のレベルも上がる。

ヨーロッパ、南米予選のようにハイレベルになる。

今後のカタールにも注目したいと思う。

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