COJBもクラブの方針、信念として【個の育成】って謳っているけれど、では、個の育成ってどんなものだろう。
言葉にするのは簡単だけれど、実際はそう簡単にできることではない。
また、これは違うと思うのは、「個の育成をしているのだから、試合に勝つ必要性はない!!」という考え。当然、いつも一回戦ボーイよりもより高い、厳しい、ギリギリの試合を育成年代に経験できればそれに越したことはない。だから勝てないことを「個の育成だから良いんだ」というのは、単なる綺麗事になってしまう。
しかし、逆に、チームの強さを維持していくためには、明らかに、素材の違うメンバーばかり集めたチームと、そうでないチームと対戦すれば、試合の結果は、ある意味判るが、同等の個が集まった者同士の試合になれば、戦略を用いて戦わないと勝利を勝ち取るのは難しくなる。
いわば、勝つためには犠牲心も払わなくてはならないということだ。犠牲心とは、その戦略を重視するが故に、選手個々の個性を時には、消さなくてはならないということ。簡単に言ってしまえば、ドリブルが持ち味の選手が、ポゼッションサッカーをするために、その持ち味を消して、そのチームの戦術、戦略に従ってプレーするということ。そのことによって、チームのステイタスを保たなくてはならなくなるため、個に特化した練習は陰て努力しないとならない。
多くの素材が最初から備わっている選手をセレクトし、人数も20名以下に凝縮された場合は、指導者の眼が行き届くはずだから、チームとしても、個の能力も同時に伸ばせるだろうが、これを超えれば、1人のコーチが選手を見きれる限界を超えている。
本来、中学も3年生になれば、少しずつ、その選手が、近い将来、一番芽が出る可能性の高いポジションをコーチが発見してあげて、そのポジションで、必要とされる専門的な練習を習得させて行くことも大切。ポジションの完全固定はこの年代ではまだ危険ではある、現代のサッカーに於いて、1人の選手が、1つのポジションしかできないのは、確実に、ユース年代になった時に不利になる。
その中で、唯一、固定され、専門的な練習を繰り返すポジションはGKだ。このポジションだけはハッキリしている。また、僅か一枠しかない替えの利かないポジションでもある。これは下はU12、上はプロまで平等であり、GKだけは一枠しかないのだ。この一枠を懸けて、ポジション争いをするのだが、1学年、精々多くて3名まで。しかし、3学年で考えると、9名所属することに成った時、GKコーチは単純に3名は必要になる。それを1人で指導するのは限界だし、質も上がらない。時間をずらしてGKだけの指導をしても、グランド的に余裕がないと、それは現実的に難しい。理想はせめて、各学年2名ずつ。計、6名の選手を1人のGKコーチが同時に指導するのも、質を考えれば難しいくらい。
何故なら、全ては、ユース年代、先への準備。U15で1枠のポジションを奪えず、試合経験なしで、ユース年代では、更に、人数が多い。下手をすれば、1学年、GKが10名以上在籍するチームもあるから、U15で全く試合経験がないGKが更に大人数のチームに入ってチャンスなければ、サッカーで上を目指そうなんて誰も思わなくなるでしょ。
上に行けば行くほど、個で秀でている選手を欲しがる。チームごと全部全部、スカウトしてごそっと持ってはいかない。どれも平均的に出来る選手よりも、個性がはっきりしている選手になる。
最近、Jリーグでも外国籍選手がスタメンを張って、ゴールを護っているけれど、どうしたものだろう?GKに関しては、日本のGKも優れているとは思っていたが、外国籍の選手にポジションを受け渡している現状を見ていると、日本の将来のゴールを護れる選手が育ってきていないのではないか?と思ってしまう。
これも育成年代の底辺の底辺での先に挙げた現状が、ここに至ってしまっているのでは?ということは、意外にも無視ができないことかもしれないよ。
フィールドの選手については、皆、一色単な練習ばかり続ければ、個性的な選手は育ちにくいと思う。ポゼッション練習ばかりしていれば、中盤の選手は育っても、前線でゴールする選手は果たして育てられるか?
プロ選手のスカウトをしていて、クラブから注文されるのは、やはりアタッカーが多い。デカくて、速くて、強くて、決定力あって、前線でハードワークできる選手。とても解り易い(笑)日本人に中々いないタイプを欲しがる。
ヴォランチなら、奪えて、繋げて、運べて、シュートも撃てる。守るだけじゃなくて、攻撃にも参加できる選手。例えば、これを全部持っているいるのが、レアルのカゼミーロ。
U12~U18でも、ヴォランチ(Volante)という言葉が日本では定着しているけれど、これは、ポルトガル語でブラジルのサッカーのポジション名にも使われているのだけど、意味は車ならハンドル、船なら舵、いわばコントロールタワーになる。言葉の意味はともかく、育成年代の選手達に、その役割、特徴を伝えてあげられることで、何をどう努力すれば、少しは際立った仕事ができるのか?など目指す道がはっきりしてくるかもしれない。
サイドバックならより解り易い。長友のように献身的に守備、攻撃でサイドを上下できる選手。絶妙なタイミングで前線に駆け上がり、センタリングを上げて、守備にすかさず戻る。その運動量は誰も疑わない。それだけでは他にも沢山いるから、時には中にカットインして、シュートも撃つ。今では下火になってしまっているけれど、今もなおレアルで試合に出ている元ブラジル代表、マルセーロもその典型で超攻撃型サイドバックだ。やはり特徴がはっきりしている。
このように、個を伸ばすということは、ポジションの役割があり、特徴があり、その特徴に、選手が持つ特質が当てはまれば、それをどんどん伸ばしてあげれば、専門家に近づく。色々なポジションをやってみて、一番、将来芽が出そうなポジションを誰にも負けないものとして、意識して勝負する。
だから、チーム強化ばかりが優先になると、このような個を育成する作業を忘れがちになってしまうということ。
起用さはないけれど、肉体的な強さと、人とぶつかり合うのを恐れない性格ならば、その特徴を守備的ヴォランチとして伸ばせる。奪って、仲間にパスをつけて、奪ってつける、やっていることは地味だが、こんな選手がセンターバックの前にいてくれたら、センターバックは物凄く助かる。ただ、折角奪っても、単純なパスミスが多い場合は、後ろが結局、守備率が増えるから、正確に味方にパスをつけるところまでは習得したいところ。相手の攻撃の芽を摘む役割は。チームへの貢献度としては高い。
相手のペナルティエリア内で、妙に落ち着いた選手がいるとしよう。シュート技術を上げれば、日本を代表するゴールハンターになる可能性もある。これが一番少ないのだから。ふとした発見で、その選手の特質を大きくできる可能性もある。
地域の有能な選手をセレクトして、チームのステイタスをトップとして君臨させていくなら、それはそれで、他のチームにはできない経験が選手達に与えられるのだから、それはそれで良いのだろうけれど、そうでない、チームと自覚しているならば、もっと個に特化して育成しないと、どちらも獲れない選手になってしまう確率が上がってしまう。この辺は、真剣に育成としての立ち位置を考えなければいけないと思う。どこに将来の卵がいるか判らないし、どのタイミングでブレイクするか判らないから。
日本の選手の個が世界の選手達に比較すると育ちにくいということは、意外にも、既にこのようなところに原因があるのではないか?と思わずにはいられない。