ブラジルは27州から成り立ち、サッカーの世界で言えば、その全てでプロリーグが開催されている訳ではありませんが、北から南、ほとんどの州にプロリーグがあり、そのチーム数は2022年の段階で、795プロクラブが登録されています。
日本のプロクラブが60クラブですから、国土の大きさもありますが、相当のプロクラブ数の違いがあります。
その分、サッカー選手の人口も多く、競争も比ではないと思うのですが、やはり世界基準の選手が次々と出てくるのも解ります。その内の、ほんの僅かな選手が、Jリーグのクラブの助っ人として来日しています。正直、現在Jリーグでプレーしているブラジル人選手で、同国内で名の知れた選手は限りなく少ないです。
そのブラジルで、多くの州のリーグで最もクラブ数も多く、注目度が高い、最高峰のリーグであるのが、サンパウロ州リーグです。
同州は、セリエAクラスとして、3部制を取っていて、下にセリエB、実質4部リーグという位置づけで、この4部は23歳以下の選手達で構成されています。いわばそれ以上の年齢の選手は出場できません。
セリエA-1は、1部リーグ、いわばトップリーグになりますが、
2023年度のトップリーグの決勝戦に、2011年までは草サッカーチームでプレーしていた小さなクラブが、プロの州リーグ最高峰の決勝まで昇り詰めました。
そのクラブは、アーグア・サンタと言いいます。
サンパウロ市の近郊の町、ジアデマという地域に所在を置くクラブです。
日本語に訳すと「聖なる水」という意味のクラブ名になります。
この小さく、全国的には無名のクラブが、2年連続リベルタドーレス杯を制覇し、
ブラジル全国リーグ優勝、同州リーグは既に15回の優勝経験を誇る、
疑いもなく現在ブラジルではトップクラブである名門パウメイラスと決勝を戦い、
第1戦目は、なんと2-1と勝利、しかし、第2戦目は昨日(4/9)に行われ、パウメイラスのホームスタジアム、アリアンサパルキで満員の観客を迎え、惜しくも4-0で負けてしまい、合計の5-2で準優勝に終わりましたが、このクラブへの称賛の声はサッカーに関してはとびっきり評価に厳しいブラジル人でさえ、絶賛の声が絶えません。
クラブの財政面でもパウメイラスと比較すれば、雲泥の差です。
同クラブの最高年俸の選手が8億円(ブラジルでプレーする選手ではトップ3に入ります)一方、アーグアサンタの最高年俸の選手は800万円。と言っても、
この選手が飛び抜けた年俸であり、殆どの選手が10万~20万円の給料で生活しています。ブラジルのクラブの大半は給料が遅れたり、未払いになることが多い中で、このクラブのように、給料設定は低くても、滞りなく支払われていることが、安定な成績に繋がっていると言われています(日本では、これが当たり前ではあるのですが・・)
ちょっと横道に逸れてしまうのてすが、Jリーグに来日する選手で日本のクラブを選択するにあたり、1つの大きな利点として、日本は給料が遅れずにしっかり払ってくれることもあります。いかに、ブラジルのクラブがルーズであるかが判ります・苦笑
また、アーグアサンタとパウメイラスでは施設的にもあまりにも雲泥の差で比較になりません。
パウメイラスは、全ての選手を完全に管理している精密な研究所を思わせます。とにかく資金を懸けています。
ただ、これでも、ここ2年間クラブW杯に出場していますが、レアルマドリードが待つ決勝にも進出できず敗退しています。
いくらブラジルとは言え、世界の壁は分厚いということですね。
その世界基準のビッグクラブをアーグアサンタは苦しめました。
しかし、流石、常勝軍団です、ホームでは完封勝ちで貫録を見せました。
このアーグアサンタとは、縁があり、COJBがブラジル遠征で訪問する度に、
同クラブのU15と試合させて貰います。
今回のお話はプロの世界ですが、小さなチームが大物を食う、脅かすという意味では、
育成のカテゴリーにも例えることが出来るのではないでしょうか。
個々の選手達の経験値も大きな差があるのは間違いありません。
かたや世界、国内でもトップのリーグを戦う超ビッククラブです。
かたや、サンパウロ州こそ、トップリーグまで来ましたが、全国リーグでは、
一番下の4部リーグからスタートしなくてはならないチームです。
4部リーグ・・・というと、見に覚えが出て来ますが、サッカーに絶対はない。名門相手でも打ち負かしているのですから。ちなみに準決勝では、同じく超名門のサンパウロFCを破って決勝に進出しています。
やはり、何をするにも、それに至るまでの根拠が必要だと思います。これからもアーグアサンタの軌跡を追っていこうと思います。
今回のアーグアサンタの快進撃で、同チームの選手達の注目度、価値は間違いなく変わります。
番外編になりますが、この決勝戦でもパウメイラスの宝石、16歳のエンドリッキが、ゴールを奪いました。18歳の誕生日を迎えた時に、既にレアルマドリードに移籍が決定しています。移籍金はブラジル歴代でサントスFCからバルセロナに移籍したネイマールの次に高い100億円超になります。強烈です。